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『2008年度 NCS & INCC コンベンション・レポート』

    


随分久々の更新である。
去年のNCS(Noritake Collectors' Society) とINCC (International Nippon
Collectors' Club)のコンベンションをレポートしてから早一年。
それ以来、ファンの皆さんの期待に応えうる更新ができず平素の不精を詫びたいと思う。
オールド・ノリタケファンにとってコンベンションは大きなお祭りだけに参加したものにとってそのレポートは欠かせない。やっとのことで重い腰を上げた。

今年はNCSとINCCともにオハイオ州コロンブスの同じEmbassy Hotelでの開催。しかもNCSが7月26日〜29日、INCCが7月31〜8月2日と日本からの参加者に配慮しての画期的な開催となった。それにも拘らず、皮肉にも日本からの参加者はNCSが6名、INCCはわずか5名という寂しい人数だった。実はこの2つのクラブは、昔は一つで、クラブが大きくなりニッポンものを愛好するINCCとノリタケものを愛好するNCSの2つに分かれたのである。当然、小生のように両方の会のメンバーも多く、以前より同時開催を求める声も少なくなかった。たとえ合同での同時開催でなくても今回のように同一ホテルで開催日程を少しずらした日程を組めないものか。INCCのミーティングでテリーさんがこれを懸案事項として取り上げ、賛成多数、反対一人という圧倒的多数で前向きに検討することとなった。ところが残念なことに先日サリーさんから入ったメールによると、来年のNCSのコンベンションはフェニックスでなんと5月の開催の予定という。毎年両者は7月末に開催してきただけに意外である。しかも双方のクラブの歩み寄りを期待していただけに日本からの参加者だけでなくアメリカ人にとっても大変残念な結果である。

26日

前置きが長くなったが、今年も乗り継ぎの時間的ロスなどの都合でデトロイト経由でのオハイオ、コロンブス入りとなった。井谷さんたちはシカゴ経由だったが7月26日渡米、8月2日帰国という全く同じ日程だったため、多くの時間をご一緒させていただき、大変お世話になった。ホテルにチェックインしてから、夕方のサイレント・オークションに間に合う形でレジストレーションを済まし、まず、最初に出会ったメンバーがデビッドさん。再会を喜び会うや否や話題は木村さんや井谷さんの新しい本について。

さて、サイレント・オークションであるが、Silent Auctionは、競売人による従来の入札形式(Live Auction)ではなく、各アイテムに用意された入札用紙に自分の希望落札価格と名前を記入し、最高価格を記入した者が落札者となる。また、アイテムの中には希望落札価格が表示されており、その価格で購入したければ、そのアイテムを持って会計で代金を支払えばその場で自分のものとなる。eBay AuctionのBy it now と似たようなものである。このオークションでは、自分がアウトビッドされたくない金額を記入しなければならないので、ときに次点者との価格の乖離が大きくなり、LiveAuctionのように段階的には金額がアップしない。一長一短はあるにせよ、コーヒーを飲みながら和気藹々とノリタケ談義の中で行なわれるサイレント・オークションも悪くない。この10月にJPSで行なわれるオークションもこのサイレント形式である。
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27日

NCSコンベンション2日目の初回のプレゼンテーションはデビッドさん。
ジュールベルヌの80日間世界一周にあやかって、オールドノリタケのデザインのソースを求め世界各国を周遊するというもの。小生のREMOVAL NOTICEがJAPANと題して 画像処理されて現れたのにはびっくり。アイテムは目が覚めるほど素晴らしいものが続出。
昼食をはさんで2つ目のプレゼンテーションは、リタさんによるオールドノリタケに見る風景パターンの考察。
アイテムにでてくる山は殆どが富士山に由来するといった些かの飛躍もあったが、アカデミックで奥が深く発表に相当な時間を費やしたと思われる。未熟な語学力のため、小生には十二分に理解できなかったのが悔やまれる。
3つ目は森口さんのノリタケ・アールデコに最近散見されるようになった
フェイクのイミテーションについてのレポートである。これをデビッドさんが彼女から送られてきた画像と資料を基に警告を交えそのノウハウを披露。
従来、ノリタケ・アールデコにはフェイクや贋作がないとされてきたが、近年のデコもののブームと人気の高まりによって難しいとされるRedecoratingにチャレンジするフェイクがごく稀に散見されるようになった。

無地のプレートなどのラスターを特殊な液で剥がし、絵付けしていくもので一見してフェイクかどうか全くわからない。彼女のようにプロ並の腕前にかかるとノリタケ以上の素晴らしい出来で、必ず彼女の"作品"には自身のサインを入れるという。
以前にノリタケニュースでもデコもののフェイクについてレポートされていたが、実際に贋作の作り方が証明されたわけである。
4つ目のプレゼンはSpecial Presentationと題し随分高齢の老婦人が演壇に立った。
彼女は日本陶器合名会社が明治37年(1904年)に建設した第1号窯に携わったベイリー氏の娘で、父の思い出や交友を語った。帰国後も何度か来日したらしくその際の記念プレートなどノリタケに纏わる遺品も披露された。
この窯は明治41年まで7号窯まで築造されたが、当時の石炭焼成技術が未熟だったため、『日陶は石炭でなく紙幣を焚いている』と揶揄されたくらい赤字続きで、技術指導にあたったベイリー氏の苦労も並ならぬものであったに違いない。
写真右端がご当人。左がデビッドさんのお父さん。
余談だが彼は92歳になるにもかかわらず、一人で車を運転しコンベンションに参加されたのである。
次に晩餐会であるがインフォーマルな装いで別段問題はないが、参加者全員に何かインターナショナルな出立ちでの出席が義務づけられている。
日本人にとって着物や浴衣は毎年事あるごとに披露しているため、全く新鮮味がない。ましてや、そこまで準備も心づもりなく安易にディナーにありつけると考えていた者にとって大変居心地の悪い時間になりかねない。
そこで、近くのスーパーで包装紙を調達し、荒木さんに羽織を作ってもらった。
わずか一時間足らずで即席に作っていただいたのだが見事な出来栄え。
ベスト・コスチュームとして賞は取れなかったが、居並ぶ“強豪”に随分健闘したように思う。
デビッドさんは本物のナイジェリアの衣装。そして、衣装だけでなく、出席者のパーフォーマンスも素晴らしく単なる晩餐会が一味も二味も違って大変楽しいものとなった。
28日

いよいよライブオークションだ。
本当ならワクワク、ドキドキといったところだが、出品内容を見て愕然。
去年くらいまでかろうじて数点あったスーパーアイテムが今年は一点もない。
20〜30ドル程度で落札されるものが主流で、コレクターにとって収集の対象となるものが殆どないのである。年々いいものが少なくなり、今までこういう傾向が加速してはいたが・・・・
これほどにまでなるとは思ってもいなかった。
小生が滞米中にゲットした中で最もお気に入りのアイテムは、なんとホテルのインターネットルームでビッドしたeBayの香水瓶という有様。
オールドノリタケのお宝探しが目的であれば、わざわざアメリカまで行くこともなかろう。
日本人が少なくなった理由もわからなくもない。
ただ、業者さんにとっては笑いの止まらないバーゲンセールみたいなもので、軒並み安値でバンバン落札されていた。
20〜30ドルといえばアメリカからの航空送料より安く、多少高く買ってもその程度のものはeBayの半額以下で購入できることになる。ただ、これを別送で、ましてやFedexなどで送れば、当然、個数や重量にもよるが送料が数万円という出費は覚悟しなければならない。